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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)3153号 判決 1989年2月27日

主文

一  被告らは、各自、

1  原告国に対し、一九八二万三四三六円及びこれに対する昭和五三年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員の、

2  原告新東京国際空港公団に対し、三三二万二九二一円及びこれに対する同日から支払済みまで右割合による金員の各支払をせよ。

二  原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項の1及び2に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、各自、

(一) 原告国に対し、三九六九万〇九九〇円及びこれに対する昭和五三年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員の、

(二) 原告新東京国際空港公団に対し、四二五万〇八二七円及びこれに対する同日から支払済みまで右割合による金員の各支払をせよ。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1  被告らの共謀

(一) 被告高倉克也(以下「被告高倉」という。)、同児島純二(以下「同児島」という。)、同前田道彦(以下「同前田」という。)、同平田誠剛(以下「同平田」という。)、同小泉恵司(以下「同小泉」という。)、同中路秀夫(以下「同中路」という。)、同和多田粂夫(以下「同和多田」という。)同若林一男(以下「同若林」という。)及び同藤田雄幸(以下「同藤田」という。)は、日本革命的共産主義者同盟第四インターナショナル日本支部(以下「第四インター」という。)に所属し、被告津田光太郎(以下「被告津田」という。)、同太田敏之(以下「同太田」という。)、及び同中川憲一(以下「同中川」という。)並びに原勲(以下「原」という。)は、プロレタリア青年同盟(以下「プロ青同」という。)に所属し、被告水野隆将(以下「被告水野」という。)、同山下和生(以下「同山下」という。)、同佐藤一郎(以下「同佐藤」という。)及び同石山和雄(以下「同石山」という。)は、共産主義者同盟戦旗派(以下「戦旗派」という。)に所属し、いずれも新東京国際空港(以下「新空港」という。)の開港阻止闘争に参加していた者である。

(二) 昭和五三年三月二五日午後六時ころ、千葉県山武郡芝山町朝倉所在の第四インターの通称朝倉団結小屋のいわゆる女部屋において、被告前田の指示によって集合した同派所属の被告高倉、同児島、同平田、同小泉、同中路、同若林、及び同藤田に対し、被告和多田は、「成田空港の開港を阻止するための実力闘争の一環として、明日、下水溝を通って管制塔を襲撃する闘争を決行するが、この一番重要な任務を君らにやってもらう。」旨などを指示し、次いで、被告前田は、「自分が管制塔襲撃計画の行動隊長を務める。今回の闘争は、戦旗派、プロ青同との三派共同作戦である。今晩下水溝に潜入して一晩過ごし、明日そこから地上に出て管制塔を襲撃する。管制塔内の設備、機器類を破壊するなどのための武器として大ハンマー、バール、ガスカッター、鉄パイプ、火炎びんなどが準備してある。」旨などの指示・説明をし、その場にいた右被告ら全員は、これを了承して、共同して管制塔を襲撃しその設備、機器類を破壊することを決意し、ここに第四インター所属の右被告らの共謀が成立し、その後、被告和多田を除く右被告らは、あらかじめ用意されていた右凶器類等を手分けして持ち、同町香山新田所在の熱田一方(以下「横堀の農家」という。)に赴いた。

(三) 被告佐藤は、同日午後六時ころ、同町香山新田所在の戦旗派の通称横堀団結小屋において、同派所属の被告水野、同山下及び同石山に対し、「開港実力阻止を行うが、君達は特別任務についてくれ、今夜八時に熱田さん方に行ってくれ。そこで第四インターとプロ青同の者が待ち合わせているから一緒に行動してくれ。詳しいことは熱田さん方に行けば分かるから。」などの指示をし、右被告三名は、これを了解して用意された火炎びん等を持って、横堀の農家に赴いた。

(四) 原は、同日午後五時ころ、同町香山新田所在のプロ青同の団結小屋において、同派の氏名不詳者から、「特別任務があるからやってくれないか。午後七時になったら行ってもらう場所がある。特別任務は、その場で指示する。」旨の要請を受けてこれを引き受け、同様のことを承知していた被告津田、同太田及び同中川とともに、用意されていた火炎びん、鉄パイプ等を持って横堀の農家に赴いた。

(五) 同日午後八時ころまでに横堀の農家に被告和多田及び同佐藤を除く被告ら並びに原らが集合したところ、被告前田は、戦旗派所属の被告水野、同山下及び同石山とプロ青同所属の原並びに被告津田、同太田及び中川に対し、「今夜は下水溝に入って一泊し、明日、全員で空港に突入して管制塔を占拠し、その設備、機器類を破壊して開港を阻止する。」旨などの指示をし、右戦旗派及びプロ青同に所属する七名もこれを了承して管制塔襲撃に加担することを決意し、ここに被告ら及び原ら全員による新空港管理棟建物(以下、単に「管理棟」という。)に突入して一六階VFR監視室(以下「管制室」という。ただし、別紙においては、「VFR監視室」ということがある。)の機械等管理棟内の諸施設を破壊することを内容とする共謀が最終的に成立した。

2  被告らの実行行為

(一) 被告和多田及び同佐藤を除く被告ら並びに原は、同月二六日午後一時一〇分ころ、同県成田市大字古込字込前一三三番地所在の管理棟及びそれに設置された設備、機器類を破壊する目的をもって、管理棟に突入した(なお、被告高倉、同津田、同石山、同若林及び原は、同日午後一時二〇分ころ、管理棟一階(以下、特に断わらないときは、階数は、管理棟のそれである。)において逮捕された。)。

(二) 被告水野、同児島、同太田、同前田、同中川、同平田、同山下、同小泉、同中路及び同藤田は、管理棟のエレベーター及び階段を利用して階上に上がり、同日午後一時二〇分ころから同日午後三時三〇分ころまでの間、

<1> 一三階から一六階管制室に至る階段において、火炎びんを投げつけて炎上させ、鉄パイプ、大ハンマー等でたたくなどして、別紙物件目録記載[1]建物関係(以下「本件建物関係」という。)のB、D、F、M、N(階段部分)、Q、R及びSの各物件を損壊し、

<2> 一四階マイクロ通信室において、鉄パイプ等でたたき、火炎びんを投げつけて炎上させるなどして、本件建物関係のE、同目録記載[2]無線関係(以下「本件無線関係」という。)のC(室内部分)及び同目録記載[3]物品関係(以下「本件物品関係」という。)のCの各物件を損壊し、

<3> 一四階北西側ベランダにおいて、大ハンマー、鉄パイプ等でたたくなどして、本件建物関係のH、K(一四階部分)及びP並びに本件無線関係のC(室外部分)の各物件を損壊し、

<4> 前記(1)のとおり管制室に侵入するためにその出入口扉を鉄パイプ、大ハンマー等でたたき、同所付近に火炎びんを投げつけて炎上させるなどして、管制室内にいた航空管制官五名をして屋上に退避することを余儀なくさせるなどし、もって、同人らの行為を介して、本件建物関係のK(一六階屋根部分)、L及びO並びに本件物品関係のA等の各物件を損壊した。

(三) 被告水野、同児島、同太田、同前田、同中川及び同藤田は、さらに、一四階北西側ベランダからパラボラアンテナの鉄骨を伝わるなどして一六階管制室外側に至り、

<1> 管制室のガラスを大ハンマー等でたたき破って同室内に立ち入り、大ハンマー、鉄パイプ、バール等でたたくなどして、本件建物関係のA、C、G及びN(一六階外部)、本件無線関係のA、B、D、E、F及びG並びに本件物品関係のA、B及びD等の各物件を損壊し、

<2> 右管制室のガラス破片等を落下させて、本件建物関係のI、J及びK(二、一四階部分)の各物件を損壊した。

3  損害

(一) 原告らは、それぞれ、被告らの前記不法行為により、別紙物件目録記載の各物件の所有権を侵害され(以下、右の各物件を「本件被害物件」という。)、これによって、同目録記載の損害額欄のとおり損害を被った。

(二) 物件の損壊状態と損害との関係

(1) 本件被害物件のうちには、直接的には管制室に侵入した被告らの行為により屋上に退避することを余儀なくされたりヘリコプターによる救助を受けたりするために航空管制官がやむをえずした行為又は同室に侵入しかつ抵抗したり一四階北西側ベランダにとどまりパラボラ出入口扉を外側から鉄パイプ等で押さえつけて開かないようにしたりしている被告らを逮捕するために警察官がやむをえずした行為により損壊されたものや、航空管制官が屋上に退避する際又は管制用椅子等を投げ込んだ際に損壊したか、管制室に侵入した被告らが鉄パイプ等でたたくなどして室内の機器類を損壊した際又は警察官による逮捕を免れるために機器類等を投げつけるなどして抵抗した際に損壊したか、警察官が右被告らを逮捕するために実力行動をした際に損壊したかを特定することができないものがあるが、いずれにしても、それらの物件の損壊は、被告らの不法行為に起因するものであり、その間には相当因果関係があるというべきである。

(2) 管制室のガラス一五枚のうち破損が明らかなものは八枚であるが、ほかの五枚も表面にキズができており、わずかな外力の付加で容易に破損するおそれがあって、管制室のガラスが破損すると、落下する破片による他物件の損壊等の危険があり、かつ、ガラスの取替えに日数がかかり管制業務に支障が生ずるので、そのような事故を未然に防止するため、右の五枚のガラスも取り替えざるをえなかった。また、アクリルドーム、天窓ガラス、二階防水部分は、被告らが損壊した管制室のガラス等の落下物により損壊したものである。右各物件の損壊は、いずれも被告らの不法行為に起因するものであるから、その間には相当因果関係がある。

(三) 損害額の算定方法

(1) 本件建物関係の損壊は、建物総体の一部分の破損又は汚損である。したがって、その損害額は、それぞれの部分の機能、美観等において旧に復するのに要した費用額であって、単体の損壊物件(ガラス、扉、ジュータン、ボード等)については交換補修し、それ以外の物件(塗装等)については必要面積を修復した費用額である。

また、本件無線関係についていえば、航空交通管制業務に使用されている管制用無線施設等は、わが国の電子技術の粋を集めて造られており、その各装置は、電気的、機械的性能により有機的に構成されている集合体であって、この装置の構成部品は、特別な規格及び部品により、ユニット、設備単位で製造されていて、個々の部品の特性を十分に発揮するように電気的に精密に調整されている。したがって、一部部品の損壊又は機能低下の場合にも、部分交替等によっては所期の各部の性能はもちろん、装置全体としての機能を確保することはできず、これらの装置を損壊前と同等の性能に復元するためには、ユニット、設備単位で交換補修する必要があるから、その費用額がすなわち損害額になる。

(2) 本件被害物件の損害額は、基本的には、原告国(別紙及び別表においては、単に「国」ということがある。)の所有物件及び持分については、物件の取得時の価額に損壊時までの経過年数に対応した残存率を用い、原告新東京国際空港公団(以下「原告公団」という。ただし、別紙及び別表においては、単に「公団」ということがある。)の所有物件及び持分については、物件の取得時の価額から定額法により損壊時までの経年による減価をしてそれぞれ被害時の現価(残存価額)を算定する方法により算出したが、本件建築関係の原告国の所有物件及び持分については、復旧工事を原告公団に委託したことにより原告国が負担した事務費を右被害時の価額に加えた合計額とし、また、本件無線関係及び物品関係の物件については、残存価額と復旧に要した費用額との合計額(ただし、復旧に費用を要しないものもある。)とした。

(四) 損害額算定の根拠

(1) 取得時の価額の把握について

ア 本件被害物件は、多種多様であって、その取得時の価額(以下において、「取得価額」ということもある。)が個別に明らかであるものについてはそれにより、本件建物関係や無線関係のもののうち、構造自体において複合物の一部であったり、複合物により構成されたものであったり、あるいは、新築時の契約工事代金において個別の価額が計上されていないものであったりして、個別に取得時の価額が明らかでないものについては、個々の取得時の価額を合理的に把握するべく、本件建物関係については別表Aにより、本件無線関係については別表Bによりそれぞれ算出した。

次に、別表A及び別表Bの算出方法について若干の付言をする。

(ア) 別表Aの算出方法について付言すると、契約工事代金としては個々の物件の価額が不明であっても、工事発注の前提として作成された積算書では個々の物件の価額が明らかなものについては、右の明らかな価額を基に契約工事代金に引き直した個々の物件の価額とするため、積算書における総工事費用額と契約工事代金総額との比率(落札率)を用いて契約工事代金中の当該物件の価額とした。その場合において、昭和四七年の新築工事当時の積算書で個別の物件の価額が明らかなものについては落札率だけを適用し、新築工事当時の積算書では明らかでなかったり、復旧にその限度で新たな作業を要した物件については、復旧工事発注における積算書に記載された個々の物件の価額を基としたことから、右の手法を用いて契約復旧工事代金中の当該物件の価額に引き直したうえ、それを物価変動に応じて新築当時(取得時)の価額に時点修正した。

(イ) 別表Bの算出方法について付言すると、当該物件自体の取得時の価額が直接には明らかでないが復旧時の価額から遡って新築設置当時の価額に時点修正した業者の見積価額が得られた物件については、その価額により、それ以外の取得時の価額が明らかでない物件であって、当該物件の構成部分となっている機器あるいは設備の中に取得時の価額が直接判明しているものについては、そのものについての復旧時の価額を取得時の価額と対比して得た物価修正率を適用して算出し、取得時の価額が直接明らかでない構成部分については、その復旧時の価額に右の物価修正率を適用して取得時の価額を求め、そのようにして得た各構成部分の取得時の価額の合計額に当該物件を含む工事の設置当時に要した工事費のうち当該物件の設置に相当する費用部分の金額を加算して算出した。右の当該物件の設置に相当する費用部分が直接には明らかでないものについては、それを含む一定の装置の設置工事の材料費と工事費が判明しているので、右材料費に対する工事費の割合を用いて当該物件にかかる工事費額とした。

なお、マイクロ送受信施設を構成するユニットの中には、取得時の価額が明らかでなく、復旧に当たり在庫品を使用したため復旧時の価額も明らかでないものがあるので、それらのユニットの昭和四七年当時の取得時の価額の算出については、当該ユニットのそれぞれについて他の年度(昭和四八、四九、五〇年)の買入価額が判明しているので、その価額を基に、物価上昇率を逆算適用して昭和四七年当時の価額を算定した。そして、右の物価上昇率は、多数のマイクロ関係ユニットの中で二年度にわたって購入しているものについて当該年度間の価額の上昇率を求め、当該ユニットのそれぞれについて該当する年度間の上昇率を適用した。

イ 本件被害物件のうち、原告らの共有にかかるものについては、その持分割合は、原告ら間の昭和四七年三月の「新東京国際空港管理棟官庁部分建設受託費精算書」における持分割合である、原告国〇・五八四七三、原告公団〇・四一五二七とした。

なお、一三階から一六階管制室に至る階段のうち、一三階から一四階に至る階段(一三階階段)は、原告国と同公団の共有部分であり、一四階から一六階に至る階段(一四、一五階階段)は原告国の専有部分であるので、一三階から一六階に至る階段部分に関する物件の取得時の価額の算定に当たっては、共有に係る一三階階段部分については一三階から一六階に至る階段全体の三分の一とし、原告国専有に係る一四、一五階階段部分については右階段全体の三分の二とした。

ウ 右の算出根拠により本件被害物件の個々の取得価額を算出すると、別紙算出調書[1]及び[2]の各取得時価格欄並びに同調書[3]の単価欄記載のとおりである。

(2) 耐用年数について

本件被害物件の耐用年数については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四〇年大蔵省令第一五号)一条一項一号別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)(以下「大蔵省令別表」という。)の定める年数を適用した。それを個別に示すと、次のとおりである。

<1> 本件建物関係のA、B、C、D、E、F、H、I、J、K、L、M、N、R及びSの各物件には、同表の「建物」で、「金属造のもの(骨格材の肉厚が四ミリメートルをこえるものに限る。)」で、「事務所用又は美術館用のもの及び左記以外のもの」の四五年

<2> 本件建築関係のG及びQの各物件には、同表「器具及び備品」で、「1家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」で、「じゅうたんその他の床用敷物」で、「その他のもの」の六年

<3> 本件建物関係のOの物件には、同表の「建物附属設備」で、「前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」で、「主として金属製のもの」の一八年

<4> 本件建物関係のPの物件には、同表の「構築物」で、「金属造のもの(前掲のものを除く。)」で、「つり橋、煙突、焼却炉、打込み井戸、へい、街路灯及びガードレール」の一〇年

<5> 本件無線関係のA、B、D、E及びFの各物件並びにCのうちの極超短波連絡回線(RSH)送受信設備、RSH導波管設備及びレーダーマイクロリンク(RML)空中線設備と、本件物品関係のBの物件には、同表の「器具及び備品」で、「2 事務機器及び通信機器」で、「電話設備その他の通信機器」の一〇年

<6> 本件無線関係のCのうちのRSH空中線設備及びRML送受信設備には、同表の「構築物」で、「放送用又は無線通信用のもの」で、「アンテナ」の一〇年

<7> 本件無線関係のGの物件には、同表の「器具及び備品」で、「2 事務機器及び通信機器」で、「インターホン及び放送用設備」の六年

<8> 本件物品関係のAの物件には、同表の「器具及び備品」で、「1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く)。」で、「事務机、事務いす及びキャビネット」で、「主として金属製のもの」の一五年

<9> 本件物品関係のCの物件には、同表の「器具及び備品」で、「12 前掲する資産のうち、当該資産について定められている前掲の耐用年数によるもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」で、「主として金属製のもの」の一五年

<10> 本件物品関係のDの物件には、同表の「器具及び備品」で、「11 前掲のもの以外のもの」で、「主として金属製のもの」の一〇年

(3) 残存価額について

ア 本件被害物件のうち、原告国所有(共有持分を含む。本項において、以下、同じ。)のものについては、昭和四四年四月二八日蔵理第一八八七号大蔵省理財局長通達「国有財産法施行令第19条の規定に基づき国有財産が滅失又はき損した場合における損害見積価額の算定方法について」(以下「大蔵省理財局長通達」という。)に基づき、昭和三四年八月二四日蔵管第一八〇〇号同省管財局長通達「普通財産売払評価基準」(以下、「同省管財局長通達」という。)第二章第三節3(1)(ロ)に定める経年による残存率を用いて算出し、原告公団所有のものについては、新東京国際空港公団会計規定三九条、同会計事務細則一二三条により、取得価額を基礎として、残存価額を取得価額の一〇〇分の一〇に相当する額として、前記耐用年数を用い、定額法による減価償却をして算出した。残存価額の算出方法が原告国の所有であるか原告公団の所有であるかによって異なるのは、右に記したように、算出方法についての準拠規定が原告国と原告公団とで異なるためである。そして、右各規定によれば、原告国の場合には経過年数が会計年度数によることとされているのに対し、原告公団の場合には減価償却を月数まですることとされており、また、原告公団の場合には減価償却額に生ずる円未満の端数は合計して取得年度の減価償却額に加算することとされている。したがって、残存価額について右のどちらの算定方法を用いるかによって計算結果が異なることがあるが、減価償却の月数按分をする必要がない場合(本件被害物件のうち原告ら共有物件はいずれもこれに該当する。)で、かつ、右円未満の端数処理を要しない(円未満の端数が生じない)場合には、右両者の算定方法による計算結果は一致する。

イ 右の算出根拠により本件被害物件の個々の残存価額を算出すると、別紙算出調書[1]ないし[3]の各残存価格欄記載のとおりである。

(4) 復旧に要した労務費、一般管理費等について

ア 本件建物関係の物件は、いずれも一棟の建物の構成部分であり、原告らの共有部分も多く、かつ、当初の建物新築工事全体を(官庁部分については原告国の委託を受けて)原告公団が施行した。そのようなことから、本件建物関係の物件の復旧工事においても、それを効率的、一体的に行うために、原告国は、原告公団に対し、原告国所有の物件についての復旧工事を委託した。

原告国は、右原告所有の物件についての復旧に要する費用として、原告公団が発注した本件建物関係の物件の復旧工事の設計施工に専ら従事した原告公団の職員にかかる人件費、旅費、通信費、工事雑費等のうち原告国所有の物件の復旧工事に要したものと認められる分(以下「本件事務費」という。)を直接工事費(原告公団が発注した本件建物関係の物件の請負工事契約金額のうち原告国所有の物件の復旧工事に要した分)とともに負担した。そして、本件事務費は、原告公団がこれについて定めた基準である「受託工事の事務費について」(昭和五〇年四月一日経契第三四号新東京国際空港公団通達)の事務費の割合一〇パーセントを用い、これを残存価額に乗じて算出した。

なお、本件建物関係の物件のうち原告公団所有の物件の復旧工事の設計施工に従事した原告公団の職員の人件費、旅費、通信費、工事雑費等は、原告公団の被った損害額を構成するものと考えられるが、原告公団は、本訴において、その損害額を計上しない。

イ 本件無線関係の物件の復旧に要した労務費、一般管理費等(材料費を除く。)及び物品関係の一般管理費は、原告国又は原告公団がそれぞれ当該物件の復旧工事を発注した業者に対して労務費、一般管理費等として支払った費用である。したがって、本件無線関係については右労務費、一般管理費等とは別に、本件物品関係については右一般管理費とは別に、それぞれ当該物件の復旧工事の設計施工に従事した原告国又は原告公団の各職員の人件費等も、原告国又は原告公団の被った損害額を構成するものと考えられるが、原告国及び原告公団は、本訴において、いずれも右損害額を計上しない。

なお、本件無線関係及び物品関係の物件のうちには発注した業者に対して労務費、一般管理費等として支払った費用がないものがある。

ウ 右の算出根拠により、本件建物関係の個々の物件について本件事務費を算出すると別紙算出調書[1]の復旧に要した労務費、一般管理費等(除材料費)欄記載のとおりであり、本件無線関係及び物品関係の個々の物件について復旧に要した労務費、一般管理費等(材料費を除く。)を算出すると同調書[2]の各復旧に要した労務費、一般管理費等(除材料費)欄及び同調書[3]の一般管理費欄記載のとおりである。

よって、被告らに対し、各自、不法行為に基づく損害賠償として、原告国は三九六九万〇九九〇円及びこれに対する不法行為の日の後の日である昭和五三年三月二七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を、原告公団は四二五万〇八二七円及びこれに対する同日から支払済みまで右割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求の原因に対する認否

1  被告石山、同若林及び同藤田を除く被告ら

(一)(1) 請求の原因1の(一)のうち、被告和多田及び同前田が第四インターに所属し、被告津田及び同太田並びに原がプロ青同に所属し、被告水野、同山下、同佐藤及び同石山が戦旗派に所属していたこと、被告和多田及び同佐藤を除く被告らがいずれも新空港の開港阻止闘争に参加していたことは認めるが、その余の事実は否認する。

(2) 請求の原因1の(二)のうち、被告前田が「自分が行動隊長を務める。今回の闘争は、戦旗派、プロ青同との三派共同作戦である。今晩下水溝に潜入して一晩過ごし、明日そこから地上に出る」旨の指示・説明をしたこと、被告和多田を除く原告ら主張の被告らの間で管制塔に突入・占拠する共謀が成立したこと、右被告らが大ハンマーなどを持って横堀の農家に赴いたことは認めるが、被告高倉、同児島、同平田、同小泉及び同中路が被告前田の指示により原告ら主張の女部屋に集合したこと、被告和多田が原告ら主張の被告らに指示したこと、被告前田が管制塔を襲撃する、管制塔内の設備、機器類を破壊するなどの武器として大ハンマーなどが準備してある旨の指示・説明をしたこと、被告和多田を除く原告ら主張の被告らの間に管制塔の設備、機器類を破壊することについて共謀が成立したことは否認し、被告若林及び同藤田が被告前田の指示により右女部屋に集合したことは不知。そもそも被告和多田は、右女部屋にはいなかった。また、被告前田の説明は、管制塔の「襲撃」ではなく、「占拠」である。したがって、大ハンマー、バール、ガスカッターは、設備、機器類の破壊のためではなく、施錠されているであろう扉を開くために用意されたものであり、大ハンマーなどは凶器ではなく、扉を開くための道具に過ぎない。

(3) 請求の原因1の(三)のうち、火炎びんが用意されていたことは否認し、その余の事実は認める。

(4) 請求の原因1の(四)の事実は認める。

(5) 請求の原因1の(五)のうち、被告前田の指示中「設備、機器類を破壊して」の部分、最終的に成立した共謀の内容中「管制室の機械等管理棟内の諸施設を破壊する」の部分は否認し、その余の事実は認める。なお、原告ら主張の戦旗派及びプロ青同に所属する七名が加担することを決意したのは、管制塔の「襲撃」ではなく「占拠」である。

(二)(1) 請求の原因2の(一)のうち、原告ら主張の被告らの管理塔への突入が「管理棟及びそれに設置された設備、機器類を破壊する目的をもって」したことは否認し、その余の事実は認める。

(2) 請求の原因2の(二)のうち、前文、並びに<1>中の原告ら主張の場所、方法で本件建物関係のD、Q、R及びSの各物件を損壊したこと、<2>中の本件建物関係のEの物件を損壊し、本件無線関係のC(室内部分)の物件のカバーの一部に凹凸を生じさせたこと、<3>中の本件無線関係のC(室外部分)の物件を損壊したこと、<4>中の航空管制官が屋上に出たことは認めるが、<3>中の本件建物関係のH及びKの各物件を損壊したこと、並びに、<4>中の右前文掲記の被告らが航空管制官らをして退避することを余儀なくさせたこと、及び、原告ら主張の物件の損壊が航空管制官らの行為を介してであることは否認し、<1>中の本件建物関係のB、F、M及びN(階段部分)の各物件を損壊したこと、<2>中の本件物品関係のCの物件を損壊したこと、並びに、<4>中の原告ら主張の各物件を損壊したことは不知。

エレベーターで上に昇った右前文掲記の被告ら一〇名は、一四階マイクロ通信室から本件建物関係のHのパラボラ出入口扉を通って一四階ベランダに出た。そのうち六名は、一六階管制室に入り、そこで逮捕されている。また、残った六名は、その後一四階マイクロ通信室に入ることなく一四階ベランダで逮捕されている。ところで、右被告ら一〇名が一四階ベランダに出た際には、右パラボラ出入口扉には鍵がかかっていなかったために(事件直前、一四階ベランダで塗装工事が行われており、業者ないしガードマンが鍵をかけるのを忘れていたのである。)、右被告ら一〇名は、これを損壊することなくベランダに出ることができたのであって、右被告ら一〇名が右パラボラ出入口扉を損壊した事実はない。

(3) 請求の原因2の(三)のうち、前文、及び、<1>中の本件建物関係のAの物件のうちの二枚を損壊したことは認めるが、<1>中の本件建物関係のC、G及びN(一六階外部)の各物件を損壊したことは否認し、<2>の事実は不知。

一六階管制室は五角形をした部屋であって、各面当たり三枚合計一五枚のガラスがはめこまれており、原告らは、被告らがそのうち本件建物関係のAの管制塔ガラス一三枚を破損したと主張する。しかしながら、本件において破損したガラスは合計八枚であり、このうち少なくとも二枚は、警察官が破損したものである。また、前項の被告ら一〇名は、一階エレベーター・ホールからエレベーターに乗り込み、八階付近で降り、一四階ないし一六階に向かっていて、二階及び中二階に立ち寄った事実はないし、一階に残った被告高倉、同津田、同石山及び同若林並びに原は、いずれも一階で逮捕されていて、やはり逮捕されるまでの間、二階及び中二階に立ち寄った事実はない。したがって、被告らが二階及び中二階の本件建物関係のI、J及びKの各物件を損壊した事実はない。前項の一六階管制室に入った被告ら六名も、一六階屋根に行った事実はなく、同目録記載[1]建物関係のCの天井ボード、ハッチカバー、ノンスリップを損壊した覚えがない。本件当時、一六階屋根にいたのは、右被告ら六名が一六階管制室に入る直前まで同室にいた航空管制官ら四名であり、同人らは、ハッチカバーを通って一六階屋根に退避したものである。したがって、右被告ら六名が右天井ボード、ハッチカバー、ノンスリップ並びに本件建物関係のLの笠木ボーダー、Nの塗装及びOの避雷針を損壊した事実はない。さらに、右航空管制官らは、被告らが一六階管制室に侵入しようとしているのではないかと考え、これを防ぐため、本件物品関係のAの管制用椅子八脚を一六階管制室に通ずる階段に投げ込んでバリケードを作ろうとした。右管制用椅子はそのために損壊したものであり、被告らが損壊した事実はない。

(三)(1) 請求の原因3の(一)の事実は否認する。

(2) 請求の原因3の(二)ないし(四)の各事実及び主張はすべて争う。

2  被告石山

(一)(1) 請求の原因1の(三)のうち、被告石山が原告ら主張の日時ころ千葉県山武郡芝山町横堀のいわゆる団結小屋においてリーダー格の者から、面識のない他の二名とともに呼び出され、「今夜八時ころ横堀の農家に集まってくれ。」旨などを言い渡され、被告石山らが車に乗せられて農家に行ったことは認めるが、被告石山がリーダー格の者の指示を了解したことは否認する。

(2) 請求の原因1の(五)のうち、被告石山らが同日午後八時ころに至り第四インターのリーダーと目される者から同夜下水道に入って一泊し、翌二六日に空港に突入して管制塔を占拠し、開港を阻止する旨の告知を受けたことは認めるが、被告石山に共謀関係が成立したことは否認する。被告石山は、リーダーから一方的に指示命令を受け、今更引き返すこともできず、否応なく、主体性もなく従わさせられた存在である。すなわち、被告石山にとって、リーダーからの指示は、主観、客観の両面においてこれに反対し、拒否する等の行動をとれる性質のものではなく、当事者の選択の余地のない一方的な命令であり、したがって、被告石山が当事者の自由意思の存在を前提とする、共謀関係に参加したものとはいえないことは明らかである。

(二)(1) 請求の原因2の(一)のうち、被告石山が原告ら主張の日時ころ管理棟の入口に入り、同日午後一時一五分ころ一階において逮捕されたことは認める。

(2) 請求の原因2の(二)及び(三)のうち、原告ら主張の日時の間、管理棟において原告ら所有物件が損壊されたことは認めるが、その行為者並びに右損壊物件の詳細及び所在位置は不知。

(三)(1) 請求の原因3の(一)及び(二)のうち、原告ら所有の物件が損壊されたことは認めるが、被告石山が右損壊行為を行ったことは否認し、右損壊物件の詳細及び所在位置並びに原告らが被った損害額は不知。

(2) 請求の原因3の(三)及び(四)のうち、損害額の算定方法については、強いては争わない。

3  被告若林

請求原因事実はすべて争う。

4  被告藤田

(一) 請求の原因1のうち、被告藤田が他の被告らと管制塔の設備、機器類を破壊することについて共謀したことは否認する。

(二) 請求の原因2のうち、原告ら主張の日時のころ管理棟内で紛争があったこと、及び、被告藤田が一六階管制室に入ったことは認めるが、被告藤田が管理棟内外の物件を損壊したことは否認し、本件被害物件の種類、個数、設置の場所、所有者はいずれも不知。被告藤田は、管制室以外には入っていないし、被告藤田が管制室に入ったときは、既に他の被告らによる機械等の損壊行為が行われた後であり、被告藤田は、新たな損壊行為を行っていない。

(三) 請求の原因3のうち、(一)の事実は不知、主張は争う。

三  抗弁

1  被告石山、同若林及び同藤田を除く被告ら

(一) 正当防衛

(1) 原告らが推し進めてきた新空港建設については、手続的側面からも実体的側面からもその計画に合理性-具体的公共性が存在しないものであり、原告らが当初昭和五三年三月三〇日に開港しようとした新空港は、新東京国際空港公団法二条の要件を充足した新空港とは量的にも質的にも全く異なった欠陥空港である。このように、原告らは、一連の違法行為の積重ねによって右のような欠陥空港を暫定的に開港しようとした。

(2) そして、その暫定開港によって、地元住民は、騒音や落下物に悩まされ続けているばかりでなく、複雑な空域下での衝突事故の恐怖にさらされ続けているのである。

(3) 被告らの行為は、原告らの違法行為の積重ねによる昭和五三年三月三〇日の暫定開港によって生ずる地元住民の生活、生存を防衛しようとしたものであって、正当防衛である。

(二) 権利の濫用

(1) 本件訴訟は、損害の回復ではなく、第二期工事着工を強行するために、地元住民と支援者らを切り離し、支援者らに経済的負担の脅しをかけることによってその闘争を潰そうとする目的で提起されたものである。

(2) 国家が国民に対して損害賠償を求める以上、その発生原因について国家の手が汚れていてはならないのは当然である。そして、国家の手によって破られた正義は、国家の手によって回復されなければならないのである。

(3) 以上の点から、仮に原告らに損害賠償請求権があるとしても、その行使は、権利の濫用である。

2  被告石山

仮に被告石山の行動が外形上共謀関係への参加に当たるとしても、当時の被告石山には前記のように適法行為を期待することができなかった、すなわち、被告石山は、適法行為の期待可能性が欠如した状態にあった。

四  抗弁に対する認否

抗弁1の(一)及び(二)並びに2はいずれも争う。

第三  証拠<省略>

理由

一  責任原因について

1  被告らの共謀

<証拠>を総合すると、以下の事実を認めることができる(ただし、被告和多田及び同前田が第四インターに所属し、被告津田及び同太田並びに原がプロ青同に所属し、被告水野、同山下、同佐藤及び同石山が戦旗派に所属していたこと、被告和多田及び同佐藤を除く被告らがいずれも新空港の開港阻止闘争に参加していたこと、被告前田が「自分が行動隊長を務める。今回の闘争は、戦旗派、プロ青同との三派共同作戦である。今晩下水溝に潜入して一晩過ごし、明日そこから地上に出る」旨の指示・説明をしたこと、被告和多田を除く被告高倉、同児島、同前田、同平田、同小泉、同中路、同若林及び同藤田らの間で管制塔に突入・占拠する共謀が成立したこと、右被告和多田を除く被告らが大ハンマーなどを持って横堀の農家に赴いたこと、被告佐藤が昭和五三年三月二五日午後六時ころ千葉県山武郡芝山町香山新田所在の戦旗派の通称横堀団結小屋において同派所属の被告水野、同山下及び同石山に対し「開港実力阻止を行うが、君達は特別任務についてくれ。今夜八時に熱田さん方に行ってくれ。そこで第四インターとプロ青同の者が待ち合わせているから一緒に行動してくれ。詳しいことは熱田さん方に行けば分かるから。」などの指示をし、右被告三名は、これを了解して横堀の農家に赴いたこと、原が同日午後五時ころ同町香山新田所在のプロ青同の団結小屋において同派の氏名不詳者から「特別任務があるからやってくれないか。午後七時になったら行ってもらう場所がある。特別任務は、その場で指示する。」旨の要請を受けてこれを引き受け、同様のことを承知していた被告津田、同太田及び同中川とともに、用意されていた火炎びん、鉄パイプ等を持って横堀の農家に赴いたこと、同日午後八時ころまでに横堀の農家に被告和多田及び同佐藤を除く被告ら並びに原らが集合したところ、被告前田が戦旗派所属の被告水野、同山下及び同石山とプロ青同所属の原並びに被告津田、同太田及び同中川に対し「今夜は下水溝に入って一泊し、明日、全員で空港に突入して管制塔を占拠して開港を阻止する。」旨などの指示をし、右戦旗派及びプロ青同に所属する七名もこれを了承して管制塔襲撃に加担することを決意し、ここに被告ら及び原ら全員による管理棟に突入してこれを占拠することを内容とする共謀が最終的に成立したことについては、原告らと被告石山、同若林及び同藤田を除く被告らとの間において争いがなく、被告石山が同月二五日午後六時ころ同町横堀のいわゆる団結小屋においてリーダー格の者から面識のない他の二名とともに呼び出され、「今夜八時ころ横堀のある農家に集まってくれ。」旨などを言い渡され、被告石山らが車に乗せられて農家に行ったこと、被告石山らが同日午後八時ころに至り第四インターのリーダーと目される者から同夜下水道に入って一泊し、翌二六日に空港に突入して管制塔を占拠し、開港を阻止する旨の告知を受けたことについては、原告らと被告石山との間において争いがない。)。

(1) 被告高倉、同児島、同前田、同平田、同小泉、同中路、同和多田、同若林及び同藤田は、第四インターに所属し、被告津田、同太田及び同中川並びに原は、プロ青同に所属し、被告水野、同山下、同佐藤及び同石山は、戦旗派に所属し、いずれも新空港の開港阻止闘争に参加していた者である。

(2) 同月二五日午後六時ころ、新空港近くの第四インターの通称朝倉団結小屋の女部屋と呼ばれている部屋において、被告前田の指示によって集合した同派所属の被告高倉、同児島、同平田、同小泉、同中路、同若林及び同藤田ら一二、三名に対し、被告和多田は、新空港及びその周辺の航空写真や下水溝等の図面を前にして、「明日、三つのグループに分けて成田空港開港阻止闘争を決行する。この中で一番重要なのは下水溝を使った管制塔に進撃する闘いである。この一番重要な任務を君らにやってもらう。やりたくない者がいたら止めてもよい。逮捕は覚悟しろ。」旨の指示をし、次いで、被告前田は、自分が管制塔進撃計画の行動隊長を務める旨の自己紹介をした後、右計画の実行方法として、下水溝の図面を示しながら、「今回の闘争は、戦旗派、プロ青同との三派共同作戦である。今晩下水溝に潜入してそこで一晩過ごし、明日そこから地上に出て管制塔を襲撃する。下水溝を出たところで機動隊に阻止される可能性があるが、一部の者が火炎びんや鉄パイプで応戦し、他の者の管制塔への突入を援護する。管制塔に突入できれば内部の機器類を破壊する。機器類を破壊する武器として、大ハンマー、バール、ガスカッター、鉄パイプ、火炎びんなどが準備してある。」旨の指示・説明をし、その場にいた右被告らを含む全員は、これを了承して、共同して管制塔を襲撃しその設備、機器類を破壊することを決意し、ここに第四インター所属のその場にいた右被告らを含む全員及び被告和多田の共謀が成立し、その後、被告和多田を除く右被告らを含む全員は、あらかじめ用意されていた右武器類を手分けして持ち、横堀の農家に赴いた。

(3) 被告佐藤は、同月二五日午後六時ころ、新空港近くの戦旗派の通称横堀団結小屋において、同派所属の被告水野、同山下及び同石山に対し、「開港実力阻止を行うが、君らは戦旗派の部隊とは別の特別任務についてくれ。今夜八時に横堀の熱田方に行ってくれ。時間になったら車で送って行く。熱田方に行けばインターとプロ青同が待ち合わせているから一緒に行動してくれ。詳しいことは熱田方に行けば分かるから。」などの指示をし、右被告三名は、これを了解して、被告佐藤の指示どおり、横堀の農家に赴いた。

(4) 原は、同日午後五時ころ、新空港近くのプロ青同の団結小屋において、同派の氏名不詳者から、「特別任務があるからやってくれないか。午後七時になったら行ってもらう場所がある。特別任務は、その場所で指示する。」旨の要請を受けてこれを引き受け、同様のことを承知していた被告津田、同太田及び同中川とともに、用意されていた火炎びん、鉄パイプ等を持って横堀の農家に赴いた。

(5) 同日午後八時ころまでに横堀の農家に右の三派に所属する被告和多田及び同佐藤を除く被告ら並びに原ら約二〇名が集合したところ、被告前田は、戦旗派所属の被告水野、同山下及び同石山とプロ青同所属の原並びに被告津田、同太田及び同中川に対し、新空港の図面を示しながら、「明日全員で空港に突入して管制塔を占拠し、管制塔の機械を破壊して開港を阻止する。今夜は下水溝に入って一泊する。」などの指示をし、右戦旗派及びプロ青同に所属する七名もこれを了承して管制塔を襲撃してその機械類を破壊することを決意し、ここに被告和多田及び同佐藤並びに右のその場にいた被告ら及び原ら約二〇名の者全員による、管理棟に突入して管制室の機械等管理棟内の諸施設を破壊することを内容とする共謀が最終的に成立した。

(6) 右のその場にいた被告ら及び原ら約二〇名の者は、それぞれ火炎びん、鉄パイプ、ハンマー、バール、ガスカッター等を分担して所持し、横堀の農家を出発して新空港内に通ずる地下排水溝の突起口付近に至り、順次右突起口から右地下排水溝に入り込んでいたところ、その最中に警察官に発見されて数名の者が地下排水溝に入ることができなかったため、右地下排水溝に入ったのは、被告和多田及び同佐藤を除く被告ら並びに原の一五名であった。その一五名の者は、右地下排水溝内を徒歩で進んで、同空港内の地下に至り、そこで一夜を過ごした。

以上の事実を認めることができ、右認定に反する<証拠>は、<証拠>に照らして信用できないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  被告らの実行行為とそれによる原告らの被害

(一)  <証拠>を総合すると、以下の事実を認めることができる(ただし、被告和多田及び同佐藤を除く被告ら並びに原が同月二六日午後一時一〇分ころ同県成田市大字古込字込前一三三番地所在の管理棟に突入したこと、被告高倉、同津田、同石山、同若林及び原が同日午後一時二〇分ころ一階において逮捕されたこと、被告水野、同児島、同太田、同前田、同中川、同平田、同山下、同小泉、同中路及び同藤田が管理棟のエレベーター及び階段を利用して階上に上がり、同日午後一時二〇分ころから同日午後三時三〇分ころまでの間、一三階から一六階管制室に至る階段において火炎びんを投げつけて炎上させ鉄パイプ、大ハンマー等でたたくなどして本件建物関係のD、Q、R及びSの各物件を損壊したほか、本件建物関係のEの物件を損壊し、本件無線関係のC(室内部分)の物件のカバーの一部に凹凸を生じさせ、本件無線関係のC(室外部分)の物件を損壊したこと、航空管制官が屋上に出たこと、被告水野、同児島、同太田、同前田、同中川及び同藤田がさらに一四階北西側ベランダからパラボラアンテナの鉄骨を伝わるなどして一六階管制室外側に至り、本件建物関係のAの物件のうちの二枚を損壊したことについては、原告らと被告石山、同若林及び同藤田を除く被告らとの間において争いがなく、被告石山が同日午後一時一〇分ころ管理棟の入口に入り、同日午後一時一五分ころ一階において逮捕されたこと、同日午後一時二〇分ころから同日午後三時三〇分ころまでの間、管理棟において(原告らの所有)物件が損壊されたことについては、原告らと被告石山との間において争いがなく、同日午後一時二〇分ころから同日午後三時三〇分ころまでの間、管理棟内で紛争があったこと、被告藤田が一六階管制室に入ったことについては、原告らと被告藤田との間において争いがない。)。

(1) 被告和多田及び佐藤を除く被告ら並びに原は、同日午後一時一〇分ころ、管理棟建物及びこれに設置された設備、機器類を破壊する目的をもって、前記地下排水溝から地上に出て、管理棟の表玄関から管理棟内に一団となって突入した。

(2) 被告高倉、同津田、同石山及び同若林並びに原は、同日午後一時一五分ころ同日午後一時二〇分ころにかけて、管理棟一階玄関ホールの床に火炎びんを投げつけて炎上させるなどした。

(3) 被告水野、同児島、同太田、同前田、同中川、同平田、同山下、同小泉、同中路及び同藤田(以下、これらの被告を「階上に上がった被告ら」という。)は、管理棟のエレベーター及び階段を利用して階上に上がり、同日午後一時二〇分ころから、

<1> 一三階から一五階に至る階段において、床に火炎びんを投げつけて炎上させたり、扉等を鉄パイプ、大ハンマー等でたたくなどして、本件建物関係のB、D、F、M、N(階段部分)、Q、R及びSの各物件を損壊し、

<2> 一四階マイクロ通信室において、送受信装置、警報制御装置等を鉄パイプ等でたたき、室内に火炎びんを投げつけて炎上させるなどして、本件建物関係のE、本件無線関係のC(室内部分)及び本件物品関係のCの各物件を損壊し、

<3> 管制室に侵入しようとして、その出入口扉を鉄パイプ、大ハンマー等でたたき、管制室内にいてその気配から階上に上がった被告らが侵入してきて危害を加えることをおそれた航空管制官五名に右被告らの侵入を防ぐバリケードを築くため管制用椅子等を一六階から一五階に通ずる階段に投げ入れることを余儀なくさせ、

<4> 管制室出入口扉付近に火炎びんを投げつけて炎上させるなどして、右航空管制官五名を屋上に退避し、更に警察のヘリコプターによって救助されることを余儀なくさせ、同人らの行為を介することによって、本件建物関係のCの天井ボード及びハッチカバー、K(一六階屋根部分)、L並びにOの各物件を損壊し、

<5> 一四階北西側ベランダにおいて、大ハンマー、鉄パイプ等でパラボラアンテナの導波管をたたき切り、反射板をたたくなどして、本件建物関係のK(一四階部分)、P及びパラボラアンテナの導波管や反射板裏側等本件無線関係のC(室外部分)の各物件を損壊した。

(4) 被告水野、同児島、同太田、同前田、同中川及び同藤田(以下、これらの被告を「管制室に侵入した被告ら」という。)は、さらに、一四階北西側ベランダからパラボラアンテナの鉄骨を伝わるなどして一六階管制室外側に至り、管制室の窓ガラスを大ハンマー等でたたき破って管制室内に立ち入り、大ハンマー、鉄パイプ、バール等で飛行場灯火操作卓、管制卓等やその内部の計器類等をたたいたり、配線を引きずり出したりなどして、本件建物関係のAの一部及びG、本件無線関係のA、B、D、E、F及びG並びに本件物品関係のB及びDの各物件を損壊した。

(5) 管制室に侵入した被告らは、管制室窓ガラスの内側にマジックインキ等で前記三派の名称やマークを落書きしたり、右窓ガラスの破損個所から外に向って書類、灰皿等を投げ捨てたり、警察官による逮捕を免れるために一六階から一五階に通ずる階段に机等を投げ入れて右バリケードを補強したりするかたわら、右バリケードを撤去して右被告らを逮捕しようとする警察官らに対して多量の消火液を振りかけるなどし、また、一四階南東側ベランダからパラボラアンテナの鉄骨を伝わって一六階キャットウォークに上がり右被告らの逮捕に向った警察官らに対して右窓ガラスを内側から鉄パイプ等でたたいて威嚇するなどしながら、同日午後三時三〇分ころまで管制室内に立てこもり、警察官らをして右被告らを逮捕するため手カギの付いた棒等で右バリケードを撤去し、また、右窓ガラスを破損してガス銃を発射し右被告らを鎮静化させたうえさらに右窓ガラスを大きく破損してそこから管制室内に入ることを余儀なくさせた。

(6) 被告平田、同山下、同小泉及び同中路は、警察官による逮捕を免れようとして一四階北西側パラボラ出入口扉を外側から鉄パイプ等で押さえ付けるなどして、同日午後三時五七分ころまで一四階北西側ベランダにとどまり、右被告らを逮捕しようとした警察官らに本件建物関係のHの物件を損壊することを余儀なくさせ、警察官らの行為を介することによって右物件を損壊した。

以上の事実を認定することができ、右認定に反する被告前田本人の供述部分は信用できないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二)(1) <証拠>によれば、管理棟のうち管制塔部分は塔状の建物で、管制室は、その最上階の全部を占め、五角形の各壁面のほぼ全面が大きな窓状のガラス張りになっており、各面当たり三枚合計一五枚のペアガラスが鉄柱ないし鉄枠にはめ込まれているが、管制室に侵入した被告らが逮捕された直後において破損していたペアガラスは、八枚であったことを認めることができるところ、大蔵省令別表が右ペアガラスの耐用年数を四五年と定めていることは、公知の事実であり、<証拠>によれば、右ペアガラスは、昭和四七年三月二七日に取り付けられたものであること、原告国は、右ペアガラスについては右八枚以外に五枚を取り替えていることを認めることができ、右被告らが管制室内に侵入するに当たり右ペアガラスを大ハンマー等でたたき割ったばかりでなく、右被告らを逮捕すべく一六階キャットウォークに上がった警察官らを威嚇するために右ペアガラスを内側から鉄パイプ等でたたいたりし、他方において、右警察官らも管制室に立てこもって抵抗する右被告らを鎮静化するために右ペアガラスを破壊して管制室内にガス銃を発射したうえ右被告らを逮捕するために管制室内に入るに当たり右ペアガラスをさらに大きく破壊したことは前記のとおりであって、これらの事実に弁論の全趣旨を併せ考えると、右の五枚のペアガラスは、右被告らないし右警察官らの行為の衝撃によって表面にキズができ、わずかな外力によって容易に破損するおそれがある状態になったことを推認することができる。したがって、損傷した右ペアガラスは、全部で一三枚であるといわなければならない。そして、そのうちの一部の損傷は右警察官らが右被告らを逮捕するためにやむなくしたものであるから、それも右被告らの行為に起因するものであり、結局、右被告らは、自らの行為によりまた右警察官の行為を介し、本件建物関係のAの物件を損傷したものであるといわざるをえない。

(2) <証拠>によれば、管制室の窓ガラスは上部が外側に、下部が内側に傾斜していること、右管制塔には一五階と塔屋二階部分の両翼に接続する玄関ホール及び食堂の屋根との間の外周に一二ないし一四階の一部にベランダが出ているほかは庇等落下物を防ぐための設備がないことを認めることができ、管制室に侵入した被告ら及び被告らの逮捕に向った警察官らが一六階の右ペアガラスを破壊したこと、右被告らが右ペアガラスの破損個所から外に灰皿等を投げ捨てたことは前記のとおりであるから、これらの事実を併せ考えると、それらの落下物によって本件建物関係のI、J、及びK(二階部分)の各物件が損壊したことを推認することができる。そして、右ペアガラスの一部の損壊は右警察官らがやむなくしたものであって、右被告らの行為に起因するものであるから、右被告らは、自らの行為によってまた右警察官の行為を介して右各物件を損壊したものである。

(3) 管制室に侵入した被告らが一四階ベランダからパラボラアンテナの鉄骨を伝わって一六階管制室外側に至り、大ハンマー等で管制室ペアガラスを破壊して管制室内に侵入したこと、右被告らの逮捕に向った警察官らが一四階南東側ベランダからパラボラアンテナの鉄骨を伝わって一六階キャットウォークに上がり、右ペアガラスを破壊して、管制室内にガス銃を発射したりそこから管制室内に入ったことは前記のとおりであり、右事実によれば、右被告らないし警察官らの行為によって本件建物関係のN(一六階外側)の物件を損傷したことを推認することができ、いずれにしても右物件の損傷は、右被告らの行為によるものである。

(4) 管制室にいた航空管制官らが階上に上がった被告らの管制室への侵入を防ぐバリケードを築くために一六階から一五階に通ずる階段に管制用椅子等を投げ入れたこと、管制室に侵入した被告らが警察官らによる逮捕を免れるために右バリケードを補強すべく右階段に机等を投げ入れたこと、警察官らが右被告らを逮捕するために手カギの付いた棒等で右バリケードを撤去したことは前記のとおりである。右事実によれば、右航空管制官らないし右被告らないし右警察官らの行為によって本件建物関係のCのノンスリップ及び本件物品関係のAの各物件が損壊したことを推認することができるが、仮に右各物件の損壊が右航空管制官らないし右警察官らの行為によるものであったとしても、それはやむなくしたものであって、つまりは、右被告らが右航空管制官らないし右警察官らの行為を介してしたものである。

(三)  <証拠>を総合すると、本件建物関係のA、B、C、D、E、F及びG、本件無線関係のA、B、C及びD並びに本件物品関係のA、B、C及びDの各物件は原告国が、本件建物関係のR及びS並びに本件無線関係のE、F及びGの各物件は原告公団がそれぞれ所有するものであり、本件建物関係のH、I、J、K、L、M、N、O、P及びQの各物件は原告らが共有するものであることを認めることができる(ただし、昭和五三年三月二六日午後一時二〇分ころから同日午後三時三〇分ころまでの間に管理棟内において損壊された物件が原告らの所有するものであることについては、原告らと被告石山との間において争いがない。)。

3  被告らの責任原因に関する抗弁について

(一)  被告石山、同若林及び同藤田を除く被告らの正当防衛の抗弁について

右被告らは、被告らの行為は、原告らが違法行為の積重ねによって新空港を暫定開港させようとしたので、地元住民の生活、生存を防衛するために行ったものであり、正当防衛が成立する旨主張する。

しかしながら、正当防衛が成立するためには、加害行為との対比において防衛行為に手段の相当性が認められることを要する。そして、本件の場合には、仮に原告らに新空港の開港に当たって右被告らの主張するような違法があったとしても、住民は、法律上許容される手段によってその是正をすべきであって、管理棟を襲撃してその建物及び設備等を破壊し、もって開港を阻止して右の違法を是正しようとすることは、手段としての相当性を欠くものであり、したがって、正当防衛は成立しないといわなければならない。

右被告らの正当防衛の主張は、それ自体失当といわざるをえない。

(二)  被告石山の期待可能性不存在の抗弁について

被告石山は、被告石山には当時適法行為の期待可能性が欠如した状態にあった旨主張するが、右主張事実を認める足りる証拠はない。かえって、<証拠>を総合すると、被告石山は、昭和五一年一〇月ころから戦旗派に所属し、昭和五二年一〇月ころからは同派の活動に専念するために大学を中退して常時同派の神奈川地区のアジトに寝泊りするようになり、昭和五一年一二月ころからは、新空港開港阻止闘争にもしばしば参加し、前記の通称横堀団結小屋に一か月位泊り込んだこともあったこと、被告石山は、昭和五三年三月二五日午後六時ころ、右団結小屋において、被告佐藤から、特別任務についてくれなどの指示を受けた際は、右の特別任務を少数精鋭のゲリラ活動であろうと思い、「選ばれたんだな」という多少誇らしげな気持にもなっていること、被告石山は、同日午後八時ころ、横堀の農家において、被告前田から、明日管制塔を占拠しその機械等を破壊して開港を阻止する旨の計画を聞かされたときも、これを了解して計画どおり管制塔に突入することができたら自分も皆と一緒になって機械等を破壊してやろうと決意したこと、被告石山は、翌二六日午後一時一〇分ころ、火炎びん及びバールを持って管理棟に突入したことを認めることができ、右事実によれば、被告石山は、むしろ、自ら積極的に前記三派共同の管制塔襲撃に加わったものであるということができる。

したがって、被告石山の期待可能性不存在の主張は、理由がないというべきである。

4  被告らの共同不法行為の成立

以上の1ないし3の事実によれば、被告らは、共謀のうえ、原告らがそれぞれ所有し又は共有する本件被害物件を滅失し又は毀損して原告らに対してそれぞれ損害を加えたことを認めることができるから、被告らは、各自、原告らに対し、不法行為上の責任を負わなければならない。

二  損害額の算定について

1  損害額算定の方法

本訴は、原告らがそれぞれ被告らに対して被告らの不法行為によって原告らがそれぞれ所有し又は共有する物件を滅失され又は毀損されたことによる金銭賠償を求めるものであり、右被害物件の損害額の算定は、右の物件が昭和五三年三月二六日の時点(以下「本件被害時」ということがある。)に有していた交換価値と被害直後のその交換価値(滅失したものは零)との差額を算出することであるが、それは、換言すれば、被告らの不法行為によって生じた被害状態を原告ら自身においてそれぞれ合理的に消失することに要する経費を見積るものであるということもできるから、右の損害額の算定は、滅失したものについては本件被害時におけるその物と同種、同等、同量の物を調達するのに必要な費用の額を、毀損したものについては本件被害時におけるその物の形状、性能に修復するのに必要な費用の額と修復に必要な期間中使用・収益をすることができないことによって喪失した得べかりし利益の額をそれぞれ算出することによっても行うことができるというべきである。

そうすると、原告らが本件被害物件の損害額の算定方法として主張する、別表A及びB等を用いて本件被害物件の取得時の価額を把握し、それに本件被害時における残存率を乗じあるいはそれから定額法により本件被害時までの経年による減価をして右時点における本件被害物件の残存価額を算出して損害額を算定する方法には、基本的に合理性があるということができる。

そこで、以下において、右の方法を用いて本件被害物件の損害額を算定することにする。

2  本件被害物件の取得時の価額

(一)  建物関係

(1) <証拠>を総合すると、本件建物関係の物件は、管理棟の一部であって、その新築工事(以下「本件新築工事」という。)の落札によって確定した建築工事代金額が判明するもの(以下「単体の工事代金額が判明するもの」という。)や、単体の工事代金額は判明しないものの、新築工事発注の前提となる原告公団の積算書(以下「本件新築工事発注のための積算書」という。)において純工事単価の判明するもの(以下「複合物の工事代金額が判明するもの」という。)もあるが、本件新築工事発注のための積算書においては純工事単価が判明しないものもあること、しかし、その場合でも本件被害物件のうち建物関係の物件の復旧工事(以下「本件復旧工事」という。)発注の前提である原告公団の積算書(以下「本件復旧工事発注のための積算書」という。)における純工事単価は、明らかであることを認めることができる。そして、単体の工事代金額の判明するものの取得時の価額は本件新築工事代金額がすなわち取得時の価額であるが、複合物の工事代金額が判明するものの取得時の一単位当たりの価額は、本件新築工事発注のための積算書中の純工事単価の総額をもって本件新築工事代金額を除することによって算出した額であり、その他のものの取得時の一単位当たりの価額は、本件復旧工事発注のための積算書における純工事単価の総額をもって落札によって確定した復旧工事代金額を除した額に、昭和五三年度の建築物価を昭和四七年度のそれに修正した率(以下「物価修正率」という。)を乗ずることによって算出した額であるというべきである。

ア 単体の工事代金額が判明するもの<証拠>によれば、本件建物関係のRの物件の取得時の価額は、別紙計算書記載[1]建物関係のRの1のとおりであることを認めることができる。

イ 複合物の工事代金額が判明するもの

<証拠>を総合すると、次の<1>、<2>、<4>、<6>ないし<8>の各物件並びに<3>の一五階スチール片面ドア及び塗装について本件新築工事発注のための積算書中の純工事単価の総額をもって本件新築工事代金額を除した割合は、一・一五七六であり、<3>のオートロックについて本件新築工事発注のための積算書の純工事単価の総額をもって本件新築工事代金額を除した割合は、一・一二五〇であり、<5>の物件について本件新築工事発注のための積算書中の純工事単価の総額をもって本件新築工事代金額を除した割合は、一・一四六であること、複合物の工事代金額が判明するものについて前記の方法により物件毎にその取得時の価額を算出すると、

<1> 本件建物関係の[1]の物件を含むアクリルドームは二八枚で構成されているが、うち復旧を要する数量は一〇枚であるところ、その取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係の〔I〕の1のとおりであり、

<2> 本件建物関係のAの物件のうちペアガラス一枚当たりの面積は五・六平方メートルであるところ、その取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のAの1のaのとおりであり、

<3> 本件建物関係のDの物件のうち一五階スチール片面ドア、オートロック及び塗装の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のDの1のa、b及びcのとおりであり、

<4> 本件建物関係のEの物件のうちPタイルの補修を要する数量は二平方メートルであり、ボードの貼替えを要する数量は三平方メートルであるところ、右Pタイル及びボードの各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のEの1のb及びdのとおりであり、

<5> 本件建物関係のGの物件のうちジュータン敷込管制塔床の復旧を要する数量は五五平方メートルであるところ、その取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のGの1のaのとおりであり、

<6> 本件建物関係のHの物件のうち塗装を要する数量は、一・六二平方メートルであるところ、その取得時の価額及び右物件のうちの一四階スチール片面ドアのそれは、同計算書記載[1]建物関係のHの1のb及びaのとおりであり、

<7> 本件建物関係のJの物件のうち一・〇五〇メートル×一・三九〇メートルの磨網入ガラスの復旧に要する数量は二枚、二・一〇〇メートル×一・三〇〇メートルの磨網入ガラスのそれは三枚、一・五五〇メートル×一・三五〇メートルの磨網入ガラスのそれは三枚、一・三〇〇メートル×一・七〇〇メートルの磨網入ガラスのそれは一一枚であり、右の一・〇五〇メートル×一・三九〇メートルの磨網入ガラスのコーキングを要する数量は一枚当たり四・八八メートル、右の二・一〇〇メートル×一・三〇〇メートルの磨網入ガラスのそれは一枚当たり六・八メートル、右の一・五五〇メートル×一・三五〇メートルの磨網入ガラスのそれは五・八メートル、右の一・三〇〇メートル×一・七〇〇メートルの磨網入ガラスのそれは六メートルであるところ、右の一・〇五〇メートル×一・三九〇メートルの磨網入ガラス、二・一〇〇メートル×一・三〇〇メートルの磨網入ガラス、一・五五〇メートル×一・三五〇メートルの磨網入ガラス及び一・三〇〇メートル×一・七〇〇メートルの磨網入ガラスの各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のJの1のa、b、c及びdのとおりであり、

<8> 本件建物関係のSの物件のうち塗装を要する数量は三・七八平方メートルであるところ、その取得時の価額及び右物件のうちスチールドアのそれは、同計算書記載[1]建物関係のSの1のc及びaのとおりである

ことを認めることができる。

ウ その他のもの

<証拠>を総合すると、単体の工事代金額が判明するもの及び複合物の工事代金額の判明するもの以外のものである次の<1>ないし<16>の各物件又は工事費(本項においては、単に「物件」という。)について、本件復旧工事発注のための積算書中の純工事単価をもって本件復旧建築工事代金額を除した割合は、一・一七四九であり、物価修正率は、〇・五四であること、右の各物件について前記の方法により物件毎にその取得時の価額を算出すると、

<1> 本件建物関係のAの物件のうち本足場及び運搬に要する数量はそれぞれ二一六平方メートルであるところ、右本足場代及び運搬費並びに右物件のうちのトラッククレーン車(一三〇トン級)、ブーム運搬費、トラッククレーン車(一二トン級)代及びガラス取替費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のAの1のb、g、c、d、e及びfのとおりであり、

<2> 本件建物関係のB及びMの物件のうち一三~一五階階段ボードの貼替えを要する数量は五〇平方メートルであり、内部足場及び運搬を要する数量はともに七〇平方メートルであり、B及びNの物件のうち右階段ボード面、右階段裏天井面及び右階段手摺の各塗装を要する数量はいずれも一三二平方メートル、一九平方メートル及び四二平方メートルであるところ、右階段ボード面、右階段裏天井面及び右階段手摺の各塗装代、右階段ボード貼替代、内部足場代並びに運搬費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のBの1のa、b、c、d、e及びfと、Nのa、b及びc並びにMの1のa、b及びcのとおりであり、

<3> 本件建物関係のCの物件のうち一六階天井ボードの貼替えを要する数量は二・五平方メートルであり、一六階ノンスリップの取替えを要する数量は三であるところ、右一六階天井ボード貼替代及び右一六階ノンスリップ取替代並びに右物件のうちの一六階ハッチ内スチールカバー取替代の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のCの1のa及びc並びにbのとおりであり、

<4> 本件建物関係のDの物件のうち破損ドア取りはずし撤去費及び取付諸経費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のDの1のd及びeのとおりであり、

<5> 本件建物関係のEの物件のうち壁、天井の塗装を要する数量は一四五平方メートルであるところ、その取得時の価額及び右物件のうちのコンセント補修代のそれは、同計算書記載[1]建物関係のEの1のa及びcのとおりであり、

<6> 本件建物関係のFのケーブル保護カバーの取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のFの1のとおりであり、

<7> 本件建物関係のGの物件のうちジュータン敷込管制塔階段の復旧を要する数量は五平方メートルであるところ、その取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のGの1のbのとおりであり、

<8> 本件建物関係のHの物件のうち破損ドア撤去代及び取付諸経費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のHの1のc及びdのとおりであり、

<9> 本件建物関係のJの物件のうち足場及び運搬を要する数量はともに一〇八平方メートルであるところ、右足場代及び運搬費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のJの1のe及びfのとおりであり、

<10> 本件建物関係のKの物件のうち二階谷樋破損の手直しを要する数量は二八平方メートルであり、一五階、一四階の防水の補修を要する数量は九八平方メートルであるところ、右谷樋破損手直代及び一五、一四階防水補修代の各取得時の価額並びに右物件のうちの一六階屋上防水代のそれは、同計算書記載[1]建物関係のKの1のa及びc並びにbのとおりであり

<11> 本件建物関係のLの笠木ボーダー補修代の取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のLの1のとおりであり、

<12> 本件建物関係のNの物件のうち一六階キャットウォーク及び一六階外部笠木方立腰の各塗装を要する数量はそれぞれ四〇平方メートル及び九三平方メートルであるところ、右一六階キャットウォーク及び一六階外部笠木方立腰の各塗装代の取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のNの1のd及びeのとおりであり、

<13> 本件建物関係のOの物件のうち一六階避雷針廻りの塗装を要する数量は二平方メートルであるところ、その代金及び右物件のうち避雷針支持ポール加工取付代の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のOのb及びaのとおりであり、

<14> 本件建物関係のPの投光器、自動点滅器及び取付費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のPの1のa、b及びcのとおりであり、

<15> 本件建物関係のQの一三~一五階階段部分のジュータンの復旧を要する数量は二八平方メートルであるところ、その取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のQの1のとおりであり、

<16> 本件建物関係のSの破損した一三階扉(オートロック装置を除く。)の取はずし撤去費及び取付諸経費の各取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のSの1のb及びdのとおりである

ことを認めることができる。

(2) 同目録記載[1]建物関係のH、I、J、K、L、M、N、O、P及びQの各物件は原告らが共有するものであることは前記のとおりであり、前掲甲第九、第一〇号証によれば、それらの持分の割合は、原告国が〇・五八四七三であり、原告公団が〇・四一五二七であることを認めることができる。したがって、右各物件を前記取得時において取得するとしたならば、原告国及び同公団がそれぞれ負担すべき出捐の割合は右の割合によったと考えられるから、右各物件についての原告国と同公団の各取得時の価額は、右各物件全体の取得時の価額に右割合を乗じて算出すべきである。そうすると、原告国及び同公団の右各物件についてのそれぞれの取得時の価額、同計算書記載[1]建物関係のH、I、J、K、L、M、N、O、P及びQの各1の該当個所の価額のとおりとなる(もっとも、M、N及びQの各物件については、次の修正がある。)。

なお、弁論の全趣旨によれば、一三階から一六階管制室に至る階段のうち、一三階から一四階に至る階段(一三階階段)は、原告国と同公団の共有部分であり、一四階から一六階に至る階段(一四、一五階階段)は原告国の専有部分であることを認めることができ、右事実によれば、本件建物関係のB、M、Q並びにNのa、b及びcの各物件のそれぞれの取得時の価額を算出するに当たっては、原告国がその三分の二を専有し、原告国及び同公団がその三分の一を右各持分をもって共有するものとして計算するのが相当というべきである。したがって、本件建物関係のB、M、Q並びにNのa、b及びcの各物件についての原告国及び同公団のそれぞれの取得時の価額は、同計算書記載[1]建物関係のB、M、Qの各1並びにNの1のa、b及びcの該当個所の価額のとおりである。

(二)  無線関係

<証拠>を総合すると、本件被害物件のうち無線関係の物件の多くがその設置に特別の技術を要しあるいは運搬に細心の注意を要する等のことから、原告らはその設置・搬入に際して工事費、荷造運搬費等(以下、これらを「工事費」という。なお、本項においては、物件と工事費を併せて単に「物件」ということがある。)を支出しているところ、本件被害物件のうち無線関係の物件及び工事費は、その大部分が構成自体において複合物及びそれに関する工事費であったり、複合物によって構成された物件及び工事費であって、それらの復旧はほとんどが復旧工事によっているが、本件無線関係のCの物件のうちC4のRML送受信設備の一部のユニットの復旧に在庫品を使用したもの(以下「在庫品を使用したもの」という。)がある。復旧工事によったものについては、管制施設の新設工事の落札により確定した代金内訳書や新設工事請負契約書等から単体の新設工事代金額が直接に又はそれに基づく一定の算式(本件建物関係と同じ算式)によって判明するもの(以下「単体の新設工事代金額が判明するもの」という。)や、単体の新設工事代金額は判明しないものの、原告公団が当該物件の復旧工事の請負人に復旧工事の見積価額を基礎にして新設当時に遡って時点修正した価額を見積ることを依頼し、その見積価額を得たもの(以下「復旧工事の請負人による新設工事代金の見積価額が存在するもの」という。)もあるが、復旧工事代金以外には判明しないものもある。また、在庫品を使用したものについては、原告国が右の使用した在庫品を含むRML用のユニットを昭和四六年度から昭和五〇年度までの間に購入していることを認めることができる。

そして、単体の新設工事代金額が判明するもの及び復旧工事の請負人による新設工事代金額の見積価額が存在するものの取得時の価額は、右の新設工事代金額及び新設工事代金の見積価額が取得時の価額であるというべきであるが、復旧工事代金額以外には判明しないものの取得時の価額は、復旧工事代金額に物価修正率を乗じた額をもって取得時の価額とみるべきである(以下、このようにして取得時の価額を算出する物件を、「復旧工事代金額から逆算したもの」という。)。また、在庫品を使用したものの取得時の価額は、右の五年間の購入実績から購入した年度間の物価上昇率を求め、その値を被害ユニットの購入時期に最も近い購入年度の価額から逆算して被害ユニットの取得時の価額とするのが相当である。

ア 単体の新設工事代金額が判明するもの

<証拠>を総合すると、

<1> 本件無線関係のAの物件の構成部品で復旧を要する数量は、

a オーバーライド等キーユニットA 三個

b オーバーライド等キーユニットB 一個

c A型キーユニット 一〇個

d B型キーユニット 六個

e 専用電話キーユニット 三個

f ハンドマイク 三個

g ハンドセット 三個

h ランウエイセレクト及びフイルドコンディション表示ユニット 一個

i 風向指示計 二個

j 風速指示計 二個

k ディジタル時計 二個

l ナヴエイドモニターパネル 一個

m スピーカーユニット 六個

n ウインドセレクタユニット 二個

o クリアランスキーユニット 一個

p プッシュボタン電話用キーユニット 一個

q インターホンホットマイク等キーユニット 四個

r ホーロー抵抗等 一式

s 監視卓前面パネル等 一式

t 端子・雑材等 一式

であるところ、そのうちa、b、c、d、e、f及びgの各部品本体の取得時の価額は、別紙計算書記載[2]無線関係のAの1の(1)のアのとおりであり、それらの各工事費の取得時の価額は、右各部品本体の価額に右各部品本体を含む右Aの装置の新設時の工事費一九〇万〇五八〇円をその官給品相当材料費三四五五万六〇〇〇円で除した割合〇・〇五五を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のAの1の(1)のイのとおりであり、

<2> 本件無線関係のBの物件のうちブライトディスプレイ装置の表示装置(A)本体並びにASDE装置の指示装置本体及びその工事費の取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のBの1のaのア並びにbのア及びイのとおりであり、ブライトディスプレイ装置の表示装置(A)の工事費の取得時の価額は、その本体の価額にブライトディスプレイ装置の新設時の工事費一五八万六七五〇円をその官給品相当材料費二八八五万円で除した割合〇・五五を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のBの1のaのイのとおりであり、

<3> 本件無線関係のCの物件の構成部品の復旧を要する数量は、

C1 RSH送受信設備中の

a 避雷盤 二台

b 受信論理盤 一台

c 制御盤 一台

d Uリンク外七台 一式

C2 RSH空中線設備中の

e バーテックスプレート 一式

C3 RSH導波管設備中の

f 屋外フレキWG外五件 一式

C4 RML送受信設備中のユニット

g 一一一一五A 一個

h 一一六八七H 一個

i 一四九九四F 一個

j 一八五一三A 一個

k E曲りフレキ外 一式

l 一一六六二A 一個

m 一二九〇〇A 一個

n 一八四九八A 一個

o 一八五〇二A 一個

C5 RML空中線設備中の

p フレキWG外 一式

であるところ、そのうちC1のa、b及びc並びにC4のg及びhの各部品本体の取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のCの1のC1の(1)のa、b及びc並びにC4のg及びhのとおりであり、

<4> 本件無線関係のDの物件(システム)のうち復旧を要する数量は

a カメラ 二個

b 九インチモニター 一個

c ズームレンズ 二個

d ストリップカード監視台 二台

e モニター切換及び入出力変換器 一台

であるところ、それらの各部品本体の取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のDの1の(1)のa、b、c、d及びeのとおりであり、それらの各工事費の取得時の価額は、右各部品本体の価額に右システムの新設時の労務費、現場管理費及び一般管理費の合計七六万七五六〇円を右システムのうちの官給品相当材料費一四二万円及び右工事に掛かった材料費一〇四万二四四〇円の合計二四六万二四四〇円で除した割合〇・三一一七を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のDの1の(2)のとおりであり、

<5> 本件無線関係のFの物件のうちILS表示盤製造の直接費及び間接費の取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のFの1のa及びbのとおりであり、右ILS表示盤の荷造運賃の取得時の価額は、右ILS表示盤を含む集中監視制御装置の荷造運賃(二台分)七万七三九〇円に右ILS表示盤製造の直接費四五万六〇〇〇円を集中監視制御装置製造の直接費九四二万二六一〇円で除した割合〇・〇四八三九を乗じた同計算書記載[2]無線関係のFの1のcのとおりである

ことを認めることができる。

イ 復旧工事の請負人による新設工事代金の見積価額が存在するもの

<1> <証拠>を総合すると、本件無線関係のEの飛行場燈火操作卓の復旧工事を請負った東京芝浦電気株式会社がその復旧工事代金額を見積ったうえそれを新設工事をした昭和四七年二月に時点修正した材料費中の部品費は二八三万五五〇〇円、組立費は七七万円、社内検査費は一五万七五〇〇円、及び、運搬費は二万五〇〇〇円であり、労務費は一五万六〇〇〇円、直接経費は四〇〇〇円、共通仮設費は四〇〇〇円、現場管理費は二万六五〇〇円、及び、一般管理費二万六五〇〇円であることを認めることができるから、右飛行場燈火操作卓の取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のEの1のとおりであり、

<2> <証拠>を総合すると、本件無線関係のGの管制塔用インターホンの復旧工事を請負った三菱電気株式会社がその復旧工事代金額を見積ったうえそれを新設工事をした昭和五三年二月の時点に修正した代金額は五〇万円であり、そのうち塗装材費六〇〇〇円を含む材料費は二万円、労務費等は四八万円であることを認めることができるから、右管制塔用インターホンの取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のGの1のとおりになる。

ウ 復旧工事代金から逆算したもの

<証拠>を総合すると、

<1> 本件無線関係のAの物件のうちh、i、j、k、l、m、n、、o、p、q、r、s及びtの各部品本体の取得時の価額は、hの一単位当たりの復旧時の取得価額は三九万七〇〇〇円、iのそれは一三万四〇〇〇円、jのそれは一四万五〇〇〇円、kのそれは二万二五〇〇円、lのそれは三二万四〇〇〇円、mのそれは一四万七〇〇〇円、nのそれは一八万三〇〇〇円、oのそれは一三万七〇〇〇円、pのそれは一万三〇〇〇円、qのそれは一三万円、rのそれは一一万八一〇〇円、sのそれは五一万二〇〇〇円及びtのそれは二〇万四八五〇円であるところ、それぞれに右Aの部品本体のうち新設当時の取得価額が判明しているa、b、c、d、e、f及びgの一単位当たりの価額の合計額四四万三四〇〇円とそれらの復旧時の取得価額の一単位当たりの価額の合計額一一〇万九〇〇〇円とから得た物価の修正率〇・三九九八を乗じ、それに復旧に要した数量を乗じた同計算書記載[2]無線関係のAの1の(2)のアのとおりであり、それらの各工事費の取得時の価額は、右各部品本体の価額に右各部品本体の新設時の工事費総額一九〇万〇五八〇円を官給品相当材料費三四五五万六〇〇〇円で除した割合〇・五五を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のAの1の(2)のイのとおりであり、

<2> 本件無線関係のCの物件のうちC1のd、C2のe及びC3のfの各部品(一式)本体の取得時の価額は、C1のdの復旧時の取得価額は一二万五四一五円、C2のeのそれは一万八一二五円及びC3のfのそれは一三万五九〇〇円であるところ、それぞれに右C1の部品本体のうち新設当時の取得価額が判明しているaの取得価額八六万一〇〇〇円とその復旧時の取得価額一〇五万四〇〇〇円とから得た物価の修正率〇・八一六八を乗じた同計算書記載[2]無線関係のCの1のC1の(2)、C2の(1)及びC3の(1)のとおりであり、C1のa、b、c及びdの各部品の工事費の取得価額は、それらの部品本体の取得時の価額の合計額に右各部品本体の新設時の工事費総額九一万二六九〇円を官給品相当材料費八一六万四七〇〇円で除した割合を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のCの1の(3)のアのとおりであり、C2のeの部品の工事費の取得価額は、右C2のeの部品本体の取得時の価額にその新設時の工事費総額七万九〇六〇円を官給品相当材料費六九万四三〇〇円で除した割合を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のCの1のC2の(2)のとおりであり、C3のfの部品の工事費の取得価額は、右C3のfの部品本体の取得時の価額にその新設時の工事費総額一万四一〇〇円を官給品相当材料費一二万三九〇〇円で除した割合を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のCの1のC3の(2)のとおりであり、C4のi、j及びkの各ユニット本体の取得時の価額は、iの復旧時の価額は二八万円、jのそれは一三万九〇〇〇円及びkのそれは三三万二四三七円であるところ、それぞれに右C4のユニットのうち新設当時の取得価額が判明しているhの取得価額二六万円とその復旧時の取得価額二九万六〇〇〇円とから得た物価の修正率〇・八七八三を乗じた同計算書記載[2]無線関係のCの1のC4の(2)のi、j及びkのとおりであり、C4の各ユニットの工事費の取得価額は、右各ユニット本体の取得時の価額の合計額に右各ユニット本体の新設時の工事費総額二一七万二八四〇円を官給品相当材料費三三八〇万円で除した割合を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のCの1のC4の(4)のとおりであり、C5のpの設備本体の取得時の価額は、その復旧時の価額一万九〇〇〇円に右物価の修正率〇・八七八三を乗じた同計算書記載[2]無線関係のCの1のC5の(1)のとおりであり、その工事費の取得時の価額は、その設備本体の取得時の価額に右設備の新設当時の工事費総額五三万八四一〇円を官給品相当材料費五四万円で除した割合を乗じて算出した同計算書記載[2]無線関係のCの1のC5の(2)のとおりである

ことを認めることができる。

エ 在庫品を使用したもの

本件無線関係のCの物件のうちC4のl、m、n及びoの各ユニットの取得時期が昭和四八年三月三〇日であることは後記のとおりであり、<証拠>を総合すると、昭和四七年度と昭和四八年度間の本件無線関係のCの物件のうちC4のl、m、n及びoの各ユニットと同種のユニットを含むRML用ユニットの購入価額の上昇率が一・〇四五五パーセント、同年度と昭和四九年度間のそれが一・〇四六九パーセント、昭和四七年度から昭和四九年度までの間のそれが一・〇五四一パーセント及び昭和四八年度から昭和五〇年度までの間のそれが一・〇七八四パーセントであり、C4のlと同種のユニットの在庫品の購入年度は昭和四九年度、mと同種のユニットの在庫品のmの購入時期に最も近い購入年度が昭和四八年度並びにnと同種のユニットの在庫品の購入年度及びoと同種のユニット在庫品の購入年度がそれぞれ昭和五〇年度であり、C4のlと同種のユニットの在庫品の購入価額は一五万八〇〇〇円、mと同種のユニットの在庫品の購入価額が四万二〇〇〇円並びにn及びoとおのおの同種のユニットの在庫品の購入価額がそれぞれ四万四〇〇〇円であるから、C4のl、m、n及びoの各ユニットの取得時の価額は、同計算書記載[2]無線関係のCの1のC4の(3)のl、m、n及びoのとおりであることを認めることができる。

(三)  物品関係

<証拠>を総合すると、本件物品関係の物件は、すべて単体であって、そのもの自体の調達時の価額は判明するが、本件物品関係のDの滑走路視距離観測用表示器については、その調達に際して梱包輸送費・取付調整費を支出しているところ、その額が判明しないことを認めることができ、昭和五三年度の建築物価を昭和四七年度のそれに修正した物価修正率が〇・五四であることは前記のとおりであり、本件物品関係のDの取得時期が昭和四七年三月であることは後記のとおりである。そして、当初の調達時の価額が判明するものの取得時の価額は、その調達時の価額が取得時の価額であるが、調達に際して支出した額が判明しない右梱包輸送費・取付調整費の取得時の価額は、復旧時の調達価額に物価修正率を乗じた額をもって取得時の価額とみるべきである。

ア 調達時の価額が判明しているもの

<証拠>を総合すると、

<1> 本件物件関係のAの物件の取得時の価額は、別紙計算書記載[3]物品関係のAの1のとおりであり、

<2> 本件物品関係のBの物件の取得時の価額は、同計算書記載[3]物品関係のBの1のとおりであり、

<3> 本件物品関係のCの物件の取得時の価額は、同計算書記載[3]物品関係のCの1のとおりであり

<4> 本件物品関係のDの物件のうち滑走路視距離観測用表示器(本体)三台の取得時の価額は、同計算書記載[3]物品関係のDの1のaのとおりである

ことを認めることができる。

イ その他

<証拠>によれば、復旧時に調達した滑走路視距離観測用表示器三台の梱包輸送費・取付調達費は、一万五〇〇〇円であることを認めることができるから、本件物品関係のDの物件のうち滑走路視距離観測用表示器の梱包輸送費・取付調達費の取得時の価額は、同計算書記載[3]物品関係のDの1のbのとおりである。

3  本件被害物件の残存価額

(一)  本件被害物件の本件被害時における残存価額は、前記のとおり、その取得時の価額に-本件被害物件が原告らの共有に属するものであるときは、その取得時の価額に前記持分の割合を乗じて原告国及び同公団の各取得時の価額を算出したうえ、その額に-原告国の所有物又は持分については経年による残存率を適用し、原告公団の所有物又は持分については定額法をそれぞれ用いて耐用年数中における経過年数分を減価した額とすべきである。

(二)  耐用年数

本件被害物件が原告らの各所有又は共有にかかるものであることは前記のとおりであり、<証拠>によれば、原告公団の財務及び会計に関しては新東京国際空港公団法、新東京国際空港公団法施行令(昭和四一年政令第二七三号)、新東京国際空港公団法施行規則(同年運輸省令第六二号)その他の法令等の定めるところによるほか、新東京国際空港公団会計規程(昭和四二・三・三〇規程第四号)の定めるところによることになっているところ、同規程三九条及び原告公団の会計事務細則(昭和四四年一一月一日達第九号)一二三条によると、固定資産等の減価償却の方法は、取得価額を基礎として、残存価額を有形固定資産にあってはその取得価額の一〇〇分の一〇に相当する額として、大蔵省令別表の耐用年数を用い、定額法によるものとすることになっていることを認めることができるから、原告らの所有又は共有に属する本件被害物件の耐用年数については大蔵省令別表の定める年数を適用すべきである。そして、同表に次の鈎括弧内の耐用年数の定めがあることは、公知の事実であり、それを本件被害物件毎に適用すると、次のようになる。

<1> 本件建物関係のA、B、C、D、E、F、H、I、J、K、L、M、N、R及びSの各物件には、同表の「建物」で、「金属造のもの(骨格材の肉厚が四ミリメートルをこえるものに限る。)」で、「事務所用又は美術館用のもの及び左記以外のもの」の四五年

<2> 本件建築関係のG及びQの各物件には、同表の「器具及び備品」で、「1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」で、「じゅうたんその他の床用敷物」で、「その他のもの」の六年

<3> 本件建物関係のOの物件には、同表の「建物附属設備」で、「前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」で、「主として金属製のもの」の一八年

<4> 本件建物関係のPの物件には、同表の「構築物」で、「金属造のもの(前掲のものを除く。)」で、「つり橋、煙突、焼却炉、打込み井戸、へい、街路灯及びガードレール」の一〇年

<5> 本件無線関係のA、B、D、E及びFの各物件並びにCのうちのRSH送受信設備、RSH導波管設備及びRML空中線設備と、本件物品関係のBの物件には、同表の「器具及び備品」で、「2 事務機器及び通信機器」で、「電話設備その他の通信機器」の一〇年

<6> 本件無線関係のCのうちのRSH空中線設備及びRML送受信設備には、同表の「構築物」で、「放送用又は無線通信用のもの」で、「アンテナ」の一〇年

<7> 本件無線関係のGの物件には、同表の「器具及び備品」で、「2 事務機器及び通信機器」で、「インターホン及び放送用設備」の六年

<8> 本件物品関係のAの物件には、同表の「器具及び備品」で、「1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」で、「事務机、事務いす及びキャビネット」で、「主として金属製のもの」の一五年

<9> 本件物品関係のCの物件には、同表の「器具及び備品」で、「12 前掲する資産のうち、当該資産について定められている前掲の耐用年数によるもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」で、「主として金属製のもの」の一五年

<10> 本件物品関係のDの物件には、同表の「器具及び備品」で、「11 前掲のもの以外のもの」で、「主として金属製のもの」の一〇年

(三)  経過年数(経年)

<証拠>を総合すると、大蔵省理財局長通達は、国有財産が滅失又は毀損した場合における損害見積価額の具体的な算定方法を同省管財局長通達の定めるところによるとしているところ、同局長通達第二章第三節3(1)(ロ)(C)は、売払建物の経過年数を売払建物の建設年度の翌年度から現年度に至るまでの会計年度数による旨定め、前記新東京国際空港公団会計規程三九条及び原告公団の会計事務細則一二三条は、原告公団の固定資産等の減価償却の開始時期を当該固定資産等を取得した日の属する月の翌月から始めるものとすると定めていること、本件建物関係のA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q及びSの各物件の取得時期はそれぞれ昭和四七年三月、Rの物件のそれは昭和五二年二月、本件無線関係のAの物件及びBのブライトディスプレイ装置のそれはそれぞれ昭和四七年三月ころ、BのASDE装置のそれは昭和五一年三月、Cの物件のうちC1、C2及びC3のそれはそれぞれ昭和四七年三月、C4及びC5のそれはそれぞれ昭和四八年三月、Dの物件のそれは昭和五二年三月、Eの物件のそれは昭和四七年二月、Fの物件のそれは同年三月ころ、Gの物件のそれは昭和五三年二月、本件物品関係のAの物件のそれは昭和四七年三月、Bの物件のそれは二台が昭和四六年一一月ころ、一台が昭和四八年一月ころ、Cの物件のそれは昭和四七年三月ころ、Dの物件のそれは同年三月ころであることを認めることができる。

したがって、本件建物関係のA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q及びSの各物件の経過年数はそれぞれ六年、Rの物件のそれは一年一月、本件無線関係のAの物件及びBのブライトディスプレイ装置のそれはそれぞれ六年、BのASDE装置のそれは二年、Cの物件のうちのC1、C2及びC3のそれはそれぞれ六年、C4及びC5のそれはそれぞれ五年、Dの物件のそれは一年、Eの物件のそれは六年一月、Fの物件のそれは六年、Gの物件のそれは一月、本件物品関係のAの物件及びBの物件のうち二台のそれはそれぞれ六年、一台のそれは五年、C及びDの各物件のそれはそれぞれ六年となる。

(四)  残存率等

<証拠>によれば、大蔵省管財局長通達は、第二章第三節3(1)(ロ)において、経年による残存率を1から売払建物の経過年数を乗数とする毎年の減価率を減ずる等の要領により求めることを定めていること、前記原告公団の会計事務細則一二三条には、減価償却の計算の場合において、平年度の減価償却額又は月数に等分した減価償却額に生ずる円未満の端数は、合計して取得年度の減価償却額に加算するものとする定めがあることを認めることができるところ、本件被害物件の残存率等としては、原告国の所有物及び持分については、前記大蔵省理財局長通達に基づき、右の同省管財局長通達第二章第三節3(1)(ロ)に定める経年による残存率を用い、原告公団の所有物及び持分については、定額法による減価償却をしたうえ、平年度の減価償却額又は月数に等分した減価償却額に円未満の端数が生じたときは、合計して取得年度の減価償却額に加算する手法を用いるのが相当である。

(五)  以上の算出根拠により本件被害物件の個々の残存価額を算出すると、別紙計算書記載[1]ないし[3]の各物件の残存価額の項のとおりである。

4  原告国の原告公団に対する事務の委託による費用

(一)  <証拠>を総合すると、管理棟官庁部分は、原告国が原告公団に対してその施工を委託し、委託工事費として直接工事費のほかに事務費を負担したこと、右事務費の内容は、原告公団が発注した右工事の設計施工に専ら従事した原告公団の職員にかかる人件費、旅費、通信費、工事雑費等であること、右事務費の算出方法については、原告公団が「受託工事の事務費について」(昭和五〇年四月一日経契第三四号通達)を定めていること、右通達によると、右事務費の額は、工事費の総額が二〇〇〇万円以下の金額であるときは、その一〇パーセントとなっていることを認めることができ、右事実によれば、本件事務費は、管理棟官庁部分の工事費の一部ないし工事実施の必要経費であるから、本件被害時におけるその残存価額の消失は、被告らの本件不法行為による損害となるといわなければならない。

(二)  右の算出根拠により管理棟官庁部分に当たる本件建物関係のうちのA、B、C、D、E、F及びGの各物件について、並びに、H、I、J、K、L、M、N、O、P及びQの各物件の原告国の持分についてそれぞれ本件事務費の残存価額を算出すると、別紙計算書記載[1]のA、B、C、D、E、F及びGの各物件並びにH、I、J、K、L、M、N、O、P及びQの各物件についての事務費の項のとおりである。

5  復旧に要した労務費、一般管理費等について

(一)  原告国は本件無線関係のA、B、C及びDの各物件並びに本件物品関係のDの物件について、原告公団は本件無線関係のE及びGの各物件についてそれぞれその復旧のために負担した労務費、一般管理費等も被告らの本件不法行為による損害である旨主張する。そして、本件無線関係のEの物件の取得時の価額が復旧工事の請負人においてその代金額を見積ったうえそれを新設工事をした昭和四七年二月に時点修正して算出したものによるものであることは前記のとおりであり、<証拠>を総合すると、原告国は、本件無線関係のAの物件の復旧のために労務費、機械器具損料、運搬費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費として八八三万五〇五〇円を、Bの物件の復旧のために同様な費用として九〇万円を、Cの物件の復旧のために同様な費用として八七三万六〇〇〇円を、Dの物件の復旧のために労務費、現場管理費及び一般管理費として一三八万一五〇〇円を、本件物品関係のDの物件の復旧のために梱包輸送費及び取付調整費として一万五〇〇〇円をそれぞれ負担し、原告公団は、本件無線関係のEの物件の復旧のために労務費、直接経費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費として五六万円並びに材料費のうちの機器分解費、板金手直し費及び塗装費として三九万八〇〇〇円を、Gの物件の復旧のために労務費、直接経費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費として一五万円をそれぞれ負担したことを認めることができる。しかしながら、本件無線関係のEの物件の右復旧工事費中の材料費のうちの機器分解費、板金手直し費及び塗装費合計三九万八〇〇〇円については、原告公団はそれをEの物件中の部品本体の取得時の価額を構成するものとして計上すべきであったところ、前記の復旧工事の請負人が新設工事の代金額すなわち右取得時の価額を算出する便法として復旧工事の代金額を基礎としたことからその工事の名称が復旧工事固有のそれになったためそれに計上しないで別途Eの物件の復旧のための費用として計上したものと考えられるが、本件無線関係のA、B、C及びDの各物件並びに本件物品関係のDの物件の取得時の価額の算定に当たっては、原告国がいずれも工事費の残存価額を加算しており、また、本件無線関係のE及びGの各物件の取得時の価額の算定に当たっては、原告公団がいずれも工事費の残存価額を加算していることは前記のとおりであり、<証拠>を総合すると、本件無線関係のA、B及びCの右加算工事費の内容は不明であるが、本件無線関係のD及びGの各物件並びに本件物品関係のDの物件の右各加算工事費の内容は右各復旧工事の内容と全く同じであり、本件無線関係のEの物件の右加算工事費の内容は右復旧工事費中の材料費のうちの機器分解費、板金手直し費及び塗装費が除外されているだけで後の内容は全く同じであることを認めることができ、右事実によれば、本件無線関係のA、B及びCの右加算工事費の内容も右復旧工事費の内容と径庭がないことを推認することができるのであって、そうとすると、原告国は本件無線関係のA、B、C及びDの各物件並びに本件物品関係のDの物件について、損害として右各復旧工事費を、原告公団は本件無線関係のE及びGの各物件について、損害としてEの物件の右復旧工事費中の材料費のうちの機器分解費、板金手直し費及び塗装費を除く右各復旧工事費をそれぞれ二重に計上して主張している可能性があり、他に右各加算工事費に加えて本件無線関係のEの物件の右復旧工事費中の材料費のうちの機器分解費、板金手直し費及び塗装費を除く右各復旧工事費を被告らの本件不法行為による損害であるとすることについて何らの主張・立証がないから、原告国の右主張は理由がなく、原告公団の右主張は、本件無線関係のEの物件の右材料費のうちの機器分解費、板金手直し費及び塗装費(ただし、その残存価額)を損害とする限度で理由があるが、その余は理由がないというべきである。

(二)  本件無線関係のEの物件の右復旧工事費中の材料費のうち、機器分解費、板金手直し費及び塗装費の残存価額は、前記のEの部品本体の残存価額の算出根拠に従って算出すると、別紙計算書記載[2]無線関係のEの1の(二)のとおりである。

6  以上の事実によれば、被告らの前記不法行為によって、原告国は一九八二万三四三六円の、原告公団は三三二万二九二一円の損害を被ったものである。

三  被告石山、同若林及び同藤田を除く被告らの権利の濫用の抗弁について

右被告らは、本件訴訟の目的は新空港第二期工事に対する闘争を潰そうとするものであり、また、国が国民に対して損害賠償を求めるにしてはそうなる原因について国の手が汚れているから、原告らが損害賠償を請求するのは権利の濫用である旨主張する。

しかしながら、主権が国民にあるわが国においては原告国の財産はいわば国民の財産であり、全額公的出資によって設立された原告公団(原告公団が全額公的出資によって設立されたことは、公知の事実である。)の財産はいうなれば公的財産であるところ、原告らは、それぞれ、被告らに対し、その加害行為によって右のような性質を有する原告らの所有物件を損壊されて損害が発生したため、その賠償を請求するものである。したがって、原告らの右各請求は、正当な権利の行使であって、いかなる意味においても権利の社会性に反するものであるということができない道理である。

こうして、右被告らの権利の濫用の主張は、それ自体失当であるといわなければならない。

四  結論

以上のとおりであって、原告国の請求は一九八二万三四三六円及びこれに対する昭和五三年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で、原告公団の請求は三三二万二九二一円及びこれに対する同日から支払済みまで右割合による金員の支払を求める限度でそれぞれ理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 並木 茂 裁判官 楠本 新 裁判官 大善文男は、転補のため署名・押印できない。裁判長裁判官 並木 茂)

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